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令和元年度 第3回 神経生理分野勉強会報告

令和元年度 第3回 神経生理分野勉強会報告

【開催日】2019年9月26日(木)19:00~21:00

【会 場】 松阪市民病院 2F講義室

【参加人数】18 名

【内容】

『新生児・乳児・幼児期の脳波 ~基礎~』 三重大学医学部付属病院    白本 裕平 技師

 

勉強会のタイトルには新生児・乳児・幼児期の脳波とありますが、今回は新生児だけの脳波に特化して、基礎を主体に異常脳波についても少し触れての講義でした。WHO(世界保健機関)では、生まれた日を0日目として生後28日未満を「新生児」と定めています。さらに生後7日目までを「早期新生児期」、残りの期間を「後期新生児」としています。新生児の覚醒時は徐波が主体で、生後1~2か月では不規則な徐波が出現しますが、中心部に4~6Hzの律動波が出現、3か月頃に後頭部優位となります。4歳頃には7~9Hzの波が後頭部優位に出現、周波数は年齢と共に増加し、9~10歳頃までは中心部・側頭部に不規則なθ波が混入、10~15歳頃ではα波は10~12Hz、20歳頃で成人の脳波パターンとなります。新生児では、中枢神経系に大きな侵襲があっても、子供の動きなどの見た目から変化に気づくのは難しいです。超音波やCT・MRIなどの神経画像だけでは、タイミングよく画像検査を行うのは難しく、リアルタイムに病態を評価するには限界があります。脳波は、大脳機能をリアルタイムに反映し、侵襲もほとんどないため有用です。脳波記録に関しては、新生児・低出生体重児などには「電極数を減した配置」をとります。新生児脳波では覚醒時から得られる所見は少なく、動睡眠・静睡眠の区別が需要となります。脳波記録は自然睡眠で記録することが重要で、授乳直後から記録するとよい結果が得られやすいです。記録時間は40~60分行うのが良く、新生児期は睡眠と覚醒の周期が2~3時間と短く、このうち睡眠段階の持続は20分程度とされています。覚醒時間は少なく、睡眠時の脳波を判読します。入眠段階により成人のREM睡眠に相当する動睡眠が出現し、睡眠深度が深まるとNREM睡眠に相当する静睡眠へ移行します。動睡眠は高振幅徐波が間歇的に出現するとともに生理的transientsと呼ばれる波形が目立つ混合性パターン、さらに眠りが深まると、体動は消失、静睡眠へ移行します。静睡眠では高振幅徐波が連続的に出現する状態へ移行し、基線が消失、高振幅徐波パターンとなります。修正48週(満2か月)後は睡眠周期が深まっても高振幅徐波パターンのままです。修正40周では交代性パターンという新生児特有の脳波パターンが出現し、高振幅徐波パターンの様な高振幅部分と低振幅不規則パターンのような低振幅部分が数秒間隔で交互に現れます。早産児では低振幅部分はほぼ平坦であり、交代性パターンと区別して非連続性パターンと呼びます。また早産児では動睡眠とも静睡眠とも定義を満たさない未熟な睡眠段階があり、不定睡眠と呼びます。以上の内容を脳波波形とともに解説した講義でした。

 

報告者:臨床生理部門副部門長(神経生理分野)

渡邊 孝康