【開催日】令和1年7月25日(木)19:00~20:30
【場所】遠山病院 4 階 講堂
【参加人数】20名
【 内 容 】
「脳波検査の基礎知識」
三重大学医学部附属病院 渡邊 孝康 技師
波形の成り立ち、年齢的変化、導出法や賦活法などについての脳波検査の基礎的な講義でした。脳波は、大脳皮質で発生する電位変化を捉えたもので、リズム形成のペースメーカは視床の膜電位に依存し、それは脳幹網様体での意識レベルに依存しています。つまり、脳波検査は、大脳皮質だけでなく、視床や脳幹などの大脳深部を含めた機能評価となってきます。てんかんだけを見るものでなく、意識障害レベルや脳炎・脳症、発達障害など様々な目的で実施される検査です。
脳波波形を見る上で理解しておかなければならない重要なことは年齢に応じて波形が変化する事です。各年齢における基礎波の周波数の変化について講義しました。成人の正常脳波の項では、覚醒時脳波の特徴と睡眠時の脳波変化について講義しました。導出法では、各導出法の特徴や長所。短所について解説しました。基準電極導出法では耳朶を基準とするため、側頭葉てんかんの様な耳朶を活性化してしまう発作波があると、全導出に影響を及ぼしてしまい、あたかも全般性に発作波が出現しているようにみられます。このような場合は、双極導出法にするなど耳朶の影響を取り除くような工夫をする必要があります。
賦活法では、光刺激や過呼吸賦活、睡眠賦活法について講義しました。賦活法の一番の目的はてんかん性の異常波を誘発させる事です。光過敏性てんかんで光刺激時に発作波が誘発される場合、再度その誘発された周波数での光刺激を行い、再現性を確認する必要があります。過呼吸賦活では、血中CO2分圧の低下により、脳の末梢血管を収縮させ、一過性に脳虚血状態を作り出すため、もやもや病や急性期の脳血管障害などは禁忌です。
正しい脳波判読を行うためには、アーチファクトの少ないきれいな脳波記録を行うことが基本です。検査者がアーチファクトの種類や対策について熟知しておく事も必要です。また、脳波異常を検出するためには、検査者が正常脳波について正しく理解しておくことが大切で、年齢による変化や生理的変化、異常と間違えやすい波形についても理解しておかなければなりません。最も大切な事は、被検査者が安心して検査を受けられる環境を提供することです。それによって、発作間欠期では捉え難いてんかん性異常の検出率も向上します。