【開催日】令和1年8月22日(木)19:00~20:30
【会 場】遠山病院 4階 講堂
【参加者】16 名
【 内 容 】上肢NCS(基礎から応用まで)
三重県立総合医療センター 伊藤 美紀 技師
今回の勉強会は上肢末梢神経の解剖学的な構造から実際の伝導検査の手技や応用など、幅広く充実した内容の講義となりました。人の神経は大脳や脊髄などの中枢神経と脳神経(12対)や脊髄神経(31対)の末梢神経とに大別されます。伝導検査で主に用いられる上肢の末梢神経は、正中神経、尺骨神経、橈骨神経です。これらの末梢神経には運動神経と感覚神経があり、検査する神経の種類によって測定原理や手技も異なってきます。運動神経の検査は、電気刺激により導出筋で誘発された複合筋活動電位(CMAP)を記録し、波形の振幅や形、伝導速度を計測して脱髄や軸索障害の有無や程度を見るために用いられます。感覚神経の伝導検査も同様に行われますが、運動神経と異なり神経の活動電位を直接記録したものになります。神経伝導検査で注意しなければならないポイントはいくつかあります。伝導速度は温度が低下するほど遅くなり、振幅にも影響を与えます。室温は25~28℃、検査時の体温は上肢32℃、下肢30℃以上に保つことが望ましく、体温が低い場合はお湯やホットパックなどで温めます。記録電極は、導出筋を屈曲させ、筋腹の位置に貼るようにします。アーチファクト混入の影響を最小限にするために、導出部位やアース貼付部位はアルコール綿や研磨剤でしっかり拭くことが大事です。さらにアースは導出電極と刺激位置との間に貼るようにします。特に注意が必要となるのは刺激の位置や強度です。解剖学的な神経走行を正しく理解していること、刺激強度が強すぎると近くを走行している他の神経まで波及し異なった波形が導出されてしまうこと、脱髄障害が強い場合などは刺激閾値が上がっているために刺激強度がさらに必要となってくることなど、理解していないと結果に大きく影響してしまう可能性があります。神経伝導検査の重要なポイントについて初学者にも分かりやすく説明していた講義でした。さらにMartin Gruber吻合時の検査やインチング法、2L-INT法、前腕皮神経の検査など神経伝導検査の応用についても詳しく紹介されていました。